Interview
「自分が作ったもので人を楽しませる」その想 いを実現できる場所が、ここにはある
堺 大紀
さかい だいき
空間デザイナー
(外部パートナー)
外からの忖度のない意見を必要としてくれた
長野県大町市にある山翠舎の倉庫工場には、何千何百という古木が保管されている。
「あの光景を初めて見たとき、すごい宝の山を発見した気分になりました。何も知らない人には古い木が置かれているだけに見えるかもしれませんが、僕はロマンを感じたんです。1本1本、形も歴史も、関わってきた職人さんも違う。そんな物語のある古木の価値をさらに上げられたら、可能性は無限に広がるのではないかと」
そう話すのは、社外パートナーの堺 大紀さん。2020年から、物販サイトやWebサイトのデザイン監修を中心に、ロゴ制作や会社のブランディングまで、山翠舎の仕事に幅広く携わっている。
「山翠舎の中で、僕のポジションは新しい領域だと思います。この方がいいのではないかと忖度なく意見する姿勢を許容してくれる、フラットな社風が気に入り、パートナーとして活動しています」
以前はオランダへの移住を考えていた堺さん。コロナ禍の影響でそのプランは延期になったが、そんな場合でもできることは何かを考えて動くのが堺さんの真骨頂。欧米の体育館や住宅などに使われていた古い床を、日本に輸入するビジネスがあると知っていたことから、逆に日本の古材も海外で売れるのではないかと山翠舎に提案した。そこから大町市の倉庫工場への訪問、そして山上社長との出会いにつながっていく。
「社長は僕のアイデアを面白いねと言ってくれて。その後古木の物販を手伝ってほしいと依頼がありました。山上社長はアイデア豊富で一緒に仕事をするには非常に魅力的な人、というのが第一印象でした」
山翠舎とともに新たな挑戦を仕掛けることになった堺さん。そのデザイナーとして良い仕事をしたい、良いものを作りたいという想いは学生時代の原体験から生まれていた。
人を楽しませることに手を抜かない
「自分が作ったもので人を楽しませる」。堺さんがその姿勢を持ち続けると誓ったのは10代のとき。高校時代にアメリカへ留学し、アメフトのマーチングバンドでパーカッションをやっていたときのことだという。
「街のクリスマスパレードに演奏者として参加したことがありました。そのときに、子どもも大人も、人種も言葉も超えて楽しんでいる姿に感動し、今度は自ら作ったもので人を感動させたいと思いました。楽しませることに手を抜いてはダメだと」
その後、ワーキングホリデービザを取得しニュージーランドへ。現地ではフリーのグラフィックデザイナーとして活動し、帰国後も一級建築士事務所に入る。デザインや建築の学校に行っていないことは短所であり長所でもあると本人は語るが、そこにも楽しませたい、という純粋な想いがあった。
「小さい頃、親に連れられて入ったブランドショップの空間がとても素敵だったことが、今でも記憶に残っています。バーテンダーをしていたときもいろんなお店の内装を見てまわりました。好奇心のもと、独学ながら自分の中に空間デザインに関する知識が蓄積されていったのだと思います」
大切にしているのは、専門的な視点で分析することよりも、あくまでユーザー目線。お客様からの「こんな感じ」という抽象的な依頼でも、想いに寄り添い、ときにはアドバイスをしながら、良いものを作っていく。そんな堺さんの独自の視点は山翠舎での仕事にも確実に活きている。
古木を事業の軸に、新しいことにも挑戦していく仲間が欲しい
仕事において、ここは絶対に譲らない方が良いという場面では必ず発言する。会社の外部パートナーとして関わるからこそ、率直な意見が求められているという。
「物販サイトの立ち上げを準備していた際に、大きい会場で作品を展示できることになりました。そのために社内から上がってきた試作品はブランドロゴを大きく目立たせたものでした。僕は、絶対にブランド名を推すより、プロダクトとして優れていることで商品を買ってもらうべきだと思ったので、妥協せずに変更しよう、と伝えました」
社長もその意見を評価し、デザインは変更された。社内の意見に固執せず、社外のプロの見識も尊重して聞き入れる山翠舎の風通しのよさが、ここからもうかがえる。
「今後も山翠舎は古木を扱う設計施工会社、という軸は変えないでしょう。そして、その軸を活かしながら新しいことに挑戦していくには、主体性を持ってビジネスを考える人が必要です。僕自身がそうでありたいし、そういった想いがある方にもこれから仲間に加わってほしいですね」
そんな堺さん自身が今後何をしたいかと問うと、こんな言葉が返ってきた。
「自分でやれることを増やしていきたい。そして、僕はデザイン領域が本職なので、これからの業界の未来を作る人材を育てていきたい」
山翠舎のメンバーと切磋琢磨しながら、プロフェッショナルとして協業する堺さん。山翠舎を外から助けてくれる仲間も、これからきっと増えていくに違いない。