Interview
1つとして同じものがない「古木」で、お客様の夢を一番近くで叶えていく
内藤 崇弘
ないとう たかひろ
株式会社 山翠舎
現場監督
人との距離の近さが信頼を生む「現場」
「良いものを作れば、良いリアクションが返ってくる。お客様と近い距離でものづくりができる。それがこの仕事の好きなところです」
現場監督を務める内藤 崇弘さんはそう話す。山翠舎が手がけるのは小規模店舗が中心で、店内の雰囲気にこだわりのあるお客様が多い。古木を用いることで木の温もりや、重厚感を醸し出す空間づくりが求められる。
「古木は扱いが難しい木材です。もとから歪(いびつ)な形をしており、湿気の多い日本では、施工するときもねじれたり動いたり。上手に扱うには経験や知識が必要です。理系出身だからでしょうか、難易度が高い分、こう組み立てたらこうできる、と想像したものがスパッと思ったとおりに納まったときは快感を覚えます」
古木には1つとして同じものがない。だからこそ、常に新鮮で、飽きが来ない仕事だと内藤さんは感じている。
「前職では飲食店舗の設計をしていました。しかし、頭で考えるだけではなく、実際に現場で“つくる”工程に携わる方が面白いだろうと思ったのです。体を動かすのも好きだし、何より現場監督はお客様と接する機会が多い。直接お客様の想いを聞き、一番近くで想いを形にするお手伝いができる。それがやりがいです」
お客様との関わりも、この仕事の醍醐味だと内藤さんは語る。山翠舎で現場監督を務めて約5年。その仕事ぶりを信頼して声をかけてくれるお客様もいる。
「入社初期に手がけた20坪ほどのイタリアンレストラン。経験が浅い私は毎日ただただ必死に仕事をしていました。でも、その姿勢がお客様に伝わって、新たにお店を立ち上げる際に直接お声がけいただいたんです。また、郷土料理を提供する居酒屋さんを手がけたときは、予算について何度も話し合って、先方のご希望どおりの価格で施工することができました。そこから次の店舗を出す際にもご相談いただけて、うれしかったですね」
ものづくりにもっと携わりたい。その葛藤からの決断
生まれは埼玉県の鳩ヶ谷市(現在は川口市)。小学2年生の頃、工作の時間に作った作品が市のコンクールで入賞したことが、ものづくりの楽しさに目覚めたきっかけだったという。
「瓶に粘土を巻きつけて埴輪(はにわ)の人形を作りました。入賞してとてもうれしかったのを今でも覚えています。高学年では木で作った船の作品でも入賞し、木にも興味を持ちました。将来は建築の仕事をするのもいいな、と意識するようになったのもこの頃ですね」
初心を胸に、大学は建築学科へ進学。卒業後は飲食業界の大手企業に就職し、設計部署で自社の飲食店づくりに携わる。しかし、順風満帆とはいかなかった。
「店舗を設計して図面を描いても、実際に作るのは業者さんです。自分の頭の中に思い描いたものを、自分の手で形にできないことに、釈然としない気持ちでいました」
葛藤を抱えていたタイミングで、飲食業界の大規模イベントに顔を出した内藤さんは、ブースを出展していた山翠舎に出合う。これが転職を決断するきっかけとなった。
自分の夢にも、社会貢献にもなる仕事
実はそれ以前にも、山翠舎と内藤さんには接点があったという。前職の飲食店の施工に古木を使おうと、山翠舎に電話で問い合わせたことがあるのだ。その際の、親切な対応が頭の片隅に残っていたことも、転職という挑戦への後押しとなった。
「会社が働きやすいかどうかは、そこにいる人次第です。山翠舎には穏やかで落ち着いた人が多く、この環境でものづくりの仕事がしたいと思えました」
山翠舎の現場監督は、手も頭も動かす。お客様との距離も近い。古木に関わる設計・施工であれば、飲食店、商業施設、民家などいろいろな物件に携われる。内藤さんが当初思っていた以上にやりがいを感じられている要因の1つとして、山上社長の存在も大きいと語る。
「好奇心、判断力、行動力――。山上はリーダーとして私たちを引っ張ってくれる存在です。時代を見据えた先見性の持ち主でもあります。古民家から得られる古い木材を『古木』と名付けて新たな市場を切り拓いたり、SDGsが今ほど注目される前から環境に配慮した活動をしていたことからも、それはわかると思います」
山翠舎は、2019年に環境に配慮した企業として「長野県SDGs推進企業」に登録された。本社にはSDGsを説明できる空間「SDGs交流スペース」を新設するなど、社会的に意義のある取り組みも積極的に行っている。
「コロナ禍で飲食業界は大きな影響を受けました。会社としてはもちろん、私も飲食店出身なので、業界を盛り上げていきたい。例えば、店舗運営のアドバイスを行ったり、将来は自分の思い入れのある店舗の経営も山翠舎として手がけてみたいですね」
お客様の夢を一番近くで叶えていくものづくりの仕事は、いつしか自分の夢を作ることにも、社会貢献にもつながっていく。内藤さんは今、そんな想いを抱きながら、日々現場で汗を流している。