Interview

「古木」が持つ本来の価値を伝えるために、言葉を起点にデザインを作る

 

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岩田 和憲
いわた かずのり
 
グラフィックデザイナー
外部パートナー

 
熟練の職人たちの仕事や、古木に関わる人たちの想いを伝えたい
 

放っておけば廃材として捨てられてしまう古民家の建材を「古木」と名付け、1本1本のストーリーを意識し価値を再構築する。山翠舎のその姿勢に共感し、外部パートナーとして、古木のブランディングからアートディレクション、マガジン(KOBOKU通信)の編集長までを担っているのが岩田 和憲さんだ。


「古木は昔の知恵が詰まった文化的財産だと私は思っています。当時の大工の痕跡が残っているもの、釘を使わない木組みの手法で組み立てられたものなど、今の技術では再現できないものも多くあります。また、山翠舎に古木のことを知り尽くした熟練の職人たちがいることにも興味を持ちました」


硬く重い、上質な素材である古⽊には特殊な扱いが必要で、職⼈の匠の技が⽋かせない。


「山翠舎が施工する店舗はどれも今を感じるデザインですが、そこに70~80代の、昔ながらの技術を持つ大工が関わって作り上げている。現代的なのに、実はそれが古い技術に支えられているというのがすごくいいなと思ったし、そこに未来を感じたんです」


岩田さんはフリーランスのグラフィックデザイナー。山翠舎の物件の内装デザインに付加価値をつける仕事をできないかと、自ら打診したのが2016年、岩田さんが独立したばかりの頃だ。以来、山翠舎で冊子の作製、施工事例の写真集のデザイン、自社メディアの取材・執筆・写真撮影などを手がけてきた。


「私が大切にしているのは『デザインを起点にした言葉』です。複雑な文章は、なかなか読んでもらえない。言葉の前にデザインを置く、つまりデザインを整えることによって、言葉は受け取ってもらいやすくなるのです。山翠舎でやっていることも同じ。KOBOKU通信の取材で出会った人たちの想いをよりよく伝えるために、取材・執筆とともに、企画からコンセプトの作成、ビジュアル領域にも携わっています」

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人として守るべき道にこそ、仕事の本質がある
 

生まれは、岐阜県。大阪外国語大学(現・大阪大学)を卒業後、地元の新聞社で記者として働いていたときに、人生を変える瞬間に出合う。


「ある映画を観ていたら『あ、わかった』と、自分の生きていく方向性が見えたんです。子どもの頃から映画や書籍が好きで、過去のさまざまな時代の作家たちが残してきた作品に影響を受けて育ったので、“道徳”は時代や場所によって変わるけれど、人間の条件としての“倫理”は変わらないものだと何となく理解していました。その映画を見たときに、そういう倫理の深さが、自分の中で腹落ちしたのです」
過去の作家たちには、自分の倫理観に従って生き、仕事をする人が多くいた。自分もそんな表現ができる作家になりたいと、3年勤めた新聞社を退職し上京。ひたすら本を読み、原稿を書き、出版社に送る生活を始めた。


「当時は本や人にとことん向き合いました。今も考え方のベースは変わっていません。ただ、作家として芽は出ず、自分の価値観を表現することと、それを仕事として食べていくことの両立の難しさを知りました」


その後、29歳でアパレル会社にカメラマンとして入社。新聞社でカメラの扱いは知っていたが、撮影のその先を表現したいと、グラフィックデザインを独習する。写真もデザインも、それらを入口にして文章を読んでもらうことで、人の心に何かを残せると思ったからだ。「言葉を伝えるためにデザインを前に置く」という考えは、その時に生まれたという。


「10年ほどそこで働いた後、人の生活と思想をデザインで掘り起こそうと『岩田デザイン事務所』を2016年に設立しました。その最初の頃の仕事に山翠舎を選んだのは、人の暮らしを無機質化させていく画一的な建築が多い中、人間が誇りをもって仕事をしてきた証である古木を扱っていたから。何もしなければ捨てられてしまう廃材を職人の技で甦らせることに、仕事の本質みたいなものを感じるのです」

世界に通用する「古木」の価値を探求していく
 

「一時的な流行や人工的なものなど、本質的でないことであふれかえる社会では、私自身が生きづらくなっていくと感じています。心地よい感覚が広がっていくようなイメージで、自己拡張をしていきたい。そのためにも自分の倫理に沿ったフィールドを作り、仕事として継続していきたいと思っています」


だからこそ、一緒に仕事をしている山翠舎にも理想を求めている。


「企業として新しいチャレンジは大事ですが、広げすぎると伝えたい世界観が弱くなる。私が感じる山翠舎の本質的な価値は、古木であり、それを扱う職人さんたちの存在にあります。それを大切にし、その魅力を伝えていくことで、古木は世界で共有されるような概念になっていくと思います」


岩田さんは言う。仕事をする上で重要なのは、何をするか以上に誰とやるかだ、と。


「古木に関わる仕事は面白い。だからこそ、誰とやるかが大切になってきます。外部パートナーとして関わる私としては、もっと社内の人を育てたり、新しい人を採用したりすることによって、外と中の力を融合させていけば、山翠舎はさらに面白い会社として成長していけるはずだと思っています」


2030年に創業100周年を迎える山翠舎。これからどんな人たちと、どんな未来を創っていくのかを楽しみにしたい。

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